高額な医療用機器等への設備投資に対して、通常の減価償却とは別に初年度に特別償却を適用することができる制度があります。対象となる資産は改正ごとに変動していますので、注意しましょう。今回は、この制度の概要を確認します。
医療保健業を営む青色申告を行う個人又は法人が、医療用機器を取得し事業の用に供した場合、通常の減価償却とは別に、12%の特別償却を認める制度があります。
この場合の医療用機器とは、次のすべての要件に該当しているものとなります。
- 新品であること
- 取得価額が500万円以上であること
- 次の@もしくはAに掲げる医療用の機械及び装置並びに備品であること
@医療用の機械及び装置並びに器具及び備品のうち、高度な医療の提供に資するものとして厚生労働大臣が財務大臣と協議して指定するもの(構想区域等内の病院又は診療所における効率的な活用を図る必要があるものとして厚生労働大臣が財務大臣と協議して指定するものは、厚生労働大臣が定める要件を満たすものに限る。)A医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に規定する高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器で、厚生労働大臣が指定した日の翌日から2年を経過していないもの(上記@を除く。)
このうち、上記@に関しては2年ごとに改正されており、対象となる資産が変動しています。最新は2023年4月改正分です。対象になるか否かは告示によって把握が可能ですが、メーカー等に確認していただくと確実でしょう。
この特別償却制度を適用するか否かは、事業者の選択によります。
例えば、取得価額が1,000万円の医療用機器等であった場合、特別償却として120万円(1,000万円×12%)が通常の減価償却費に上乗せして必要経費(損金)として認められるため、その分税金が安くなります。
裏を返せばその分、次の年(事業年度)から減価償却費が減るため、その年(事業年度)だけでなく長い目で見て特別償却制度を適用した方がトータルで税金が安くなるか否かを試算しながら、適用するか否かを検討する必要があります。
【ケース】取得価額 1,000万円 耐用年数7年(償却率:0.286)の場合
(定率法での計算、月数按分なし、4年目までを計算)
2年目:減価償却費…約170万円
3年目:減価償却費…約121万円
4年目:減価償却費…約87万円
2年目:減価償却費…約204万円
3年目:減価償却費…約146万円
4年目:減価償却費…約104万円
上記ケースでは、1年目こそ特別償却制度を適用した場合の方が必要経費(損金)として認められる金額が大きいものの、2年目以降は適用しない場合の方が減価償却費が多くなるため、必要経費(損金)として認められる金額が大きくなりました。
取得価額や耐用年数次第でこの差は変わりますし、その年ごとの所得の変動次第で税金も変わります。こうした設備投資に関しては、必ず事業計画を立てて試算するとよいでしょう。
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