昨年12月に、令和7年度税制改正の大綱が閣議決定されました。今回はこの中から、医療機関の経営に関する主な項目を取り上げます。
医療機関の経営に関連する主な税制改正案は、次のとおりです。
医療用機器等の特別償却制度について、医療用機器に係る措置の対象機器の見直しを行った上、制度の適用期限を2年(令和9年3月31日まで)延長する。
制度の概要
医療提供体制の確保のため、医療機関が取得した機器について、昭和54年度に特別償却制度を創設し、令和元年度に充実した。
@ 医師及びその他の医療従事者の労働時間短縮に資する機器等の特別償却制度(令和元年度創設)
医師・医療従事者の働き方改革を促進するため、労働時間短縮に資する設備に関する特別償却制度の期限を2年延長する。
【対象設備】
医師等勤務時間短縮計画に基づき取得した器具・備品(医療用機器を含む)、ソフトウェアのうち一定の規模(30万円以上)のもの
【特別償却割合】
取得価額×15%

A 地域医療構想の実現のための病床再編等の促進に向けた特別償却制度(令和元年度創設)
地域医療構想の実現のため、民間病院等が地域医療構想調整会議において合意された具体的対応方針に基づき病床の再編等を行った場合に取得する建物等に関する特別償却制度の期限を2年延長する。
【対象設備】
地域医療構想調整会議において合意された医療機関の具体的対応方針に基づき、病床の再編等のために取得又は建設(改修のための工事によるものを含む)をした病院用又は診療所用の建物及びその附属設備(既存の建物を廃止し新たに建設する場合・病床の機能区分の増加を伴う改修(増築、改築、修繕又は模様替)の場合)
【特別償却割合】
取得価額×8%
B 高額な医療用機器(取得価額500万円以上)に係る特別償却制度(昭和54年度創設)
取得価額500万円以上の高額な医療用機器に関する特別償却制度について、高度な医療の提供という観点から対象機器の見直しを行った上で、期限を2年延長する。
【対象設備】
高度な医療の提供に資するもの又は医薬品医療機器等法の指定を受けてから2年以内の医療機器
【特別償却割合】
取得価額×12%
中小企業者等が機械装置、ソフトウェア等を取得した場合の特別償却・税額控除制度について、その適用期限を2年(令和9年3月31日まで)延長する。
制度の概要
中小企業における設備投資を後押しするため、一定の設備投資を行った場合に、税額控除(7%)(※)又は特別償却(30%)の適用を認める措置。適用期限は令和9年3月31日までとする。
※ 税額控除は資本金3,000万円以下の中小企業者等に限る。
中小企業者等が経営力向上計画に基づき機械装置、ソフトウェア、器具備品等を取得した場合の特別償却・税額控除制度について、売上高100億円超を目指す事業者で経済産業大臣の確認を受けた投資計画により取得する際の要件等を追加するとともに、デジタル化設備及び暗号資産マイニング業の用に供する設備を対象外とした上で、その適用期限を2年(令和9年3月31日まで)延長する。
制度の概要
中小企業の稼ぐ力を向上させる取組を促進するため、中小企業等経営強化法による認定を受けた計画に基づく設備投資について、即時償却及び税額控除(10%(※))のいずれかの適用を認める措置。適用期限は令和9年3月31日までとする。
※ 資本金3,000万円超の場合は7%。
類型別では、現行措置について、C類型(デジタル化設備)は廃止、A類型(生産性向上設備)及びB類型(収益力強化設備)は指標の見直し及びB類型の拡充(経営規模拡大設備)が行われる。
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物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整への対応
基礎控除の引き上げ(所得税のみ)、給与所得控除の最低保障額の引き上げ、特定親族特別控除(仮称)の創設などが行われる。これらに伴い、扶養親族等の合計所得金額要件などの引き上げも行われる。 -
社会医療法人、特定医療法人、認定医療法人、福祉病院事業法人、オープン病院事業法人及び厚生農業協同組合連合会の収入要件の見直し
社会医療法人等について関係法令等の改正により収入要件等の見直しが行われた後も、引き続き、社会医療法人等が行う医療保健業を収益事業から除外する等の措置を講ずる。 -
中小企業者等の法人税率の特例の延長等
適用期限を2年間(令和9年3月31日まで)延長する。ただし、単年度の所得が10億円を超える場合は、軽減税率が15%ではなく17%となるなどの、一定の見直しが図られる。 -
企業年金・個人年金制度の見直しに伴う税制上の所要の措置
確定拠出年金法等の改正を前提に、企業型確定拠出年金(企業型DC)・個人型確定拠出年金(iDeCo)等の拠出限度額の引き上げやiDeCoの加入可能年齢の引き上げ等の見直しが行われた後も、現行の税制上の措置を適用する。たとえば自営業者などの第1号被保険者の拠出限度額(iDeCoと国民年金基金で共通)が、月額7.5万円に引き上げられる(現行:月額6.8万円)。 -
法人版・個人版事業承継税制の見直し
事業承継税制の特例措置について、役員就任要件の見直し(現行:「贈与日まで3年以上役員である」→改正案:「贈与の直前に役員である」)を行う。個人版事業承継税制についても同趣旨の見直しを行う。これにより、法人版では贈与直前に役員就任でも、個人版では贈与直前に事業に従事していれば役員就任要件を満たすことになる。
検討事項としては、以下の項目が引き続き掲げられています。
- 社会保険診療報酬に係る非課税措置の存続〔事業税〕
- 医療法人の社会保険診療報酬以外部分に係る軽減措置の存続〔事業税〕
[参考]
財務省「令和7年度税制改正の大綱」
厚生労働省「令和7年度厚生労働省関係税制改正について」
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